イドラ(Idol)には次の4種類が有る。

  1. Idols of the Tribe
    • 種族のイドラは人間自身の種族や人種にその基礎を成す。人間であること自体が誤解の始まりである。例えるなら光を不規則に受取り、さらにそれをねじまげて変色させてしまう鏡のようなものだ。
  2. Idols of the Cave
    • 洞窟のイドラというのは個人のイドラである。人は個人的な経験(教育や読書等)に影響されててねじまげた解釈をしてしまう。
  3. Idols of the Market Place
    • 市場のイドラとは人と人との繋がりの中で形成されるイドラである。自分の考えを正しく言語として表現できない場合、相手は正しい理解を得る事ができず、誤った解釈をしてしまうことになる。
  4. Idols of the Theater
    • 劇場のイドラとは,今までに考え出された原則や学説等(先人の知恵・知識)を鵜呑みにしてしまうことから生じる先入観である。

特にベーコンは洞窟のイドラ劇場のイドラが正しい理解に大きく影響していると指摘している。また劇場のイドラは生まれつきのものではなく、じわりじわりと人間の理解に忍び寄るものである。

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以上の内容をふまえて僕なりに前半部分をまとめてみました。

「人間の知覚や理解というものは非常に不確かなものである。それは人間に根ざす4種類のイドラが原因である。自然というものを観察する際には、自らの中からこれらのイドラを排除した状態でできる限り多くの経験を得て、そこから論理を導くことこそ最良の方法である。」

なんにせよベーコンは「経験をできる限り列挙」することを重要視しています。この辺りは統計学に通じるものが有り、数学者的な立場というよりも物理学者的な立場と似ているのではないでしょうか(数学的思考の持ち主は統計学的なモノを嫌う傾向にあるようです)。高校物理に出て来る公式や理論を取ってみても、発表された当初は統計的に導き出されたものが多いらしいです。この辺りにベーコン流の自然へのアプローチ方法が現われているのかもしれません。